納税と憲法 なぜ納税は義務なのか
こんにちは、新人のHです
今回は、納税と憲法の話をしたいと思います。
1.なぜ納税は義務なのか
第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
憲法第30条は、国民の納税義務を定めています。この「納税の義務」は「勤労の義務」「教育の義務」とならんで、国民の三大義務の一つとされています。では、そもそもなぜ国家は国民に租税を課すことができるのでしょうか。ここでは代表的な2つの考え方を取り上げます。
①福祉国家の観点から
国家は、国民に防衛や警察をはじめ教育、福祉、道路建設などのインフラ整備、治水事業など多くの公的サービスを提供しています。国家の存在を前提とする限り、その維持・存続のために租税は不可欠であるという考え方です。
②民主主義の観点から(最大判昭和30年3月23日 民集9巻3号336頁)
国の一切の政治に関与する権利(=参政権)を有する者は、その権利の反面として、国のすべての政治を行うために必要な経費を負担する義務(=納税の義務)を負っているという考え方です。これは最高裁でこの立場をとって以来、租税の根拠に関わる判例・通説となっています。
2.国民の納める租税の使途のあり方について
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
では憲法は租税の使途についてはどのような規定があるのでしょうか。これは、憲法25条にヒントがあり、最高裁は憲法25条は以下の二つを述べていると判示しました(最大判昭和57年7月7日 民集36巻7号1235頁)。
①すべて国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきことは国の責務であること
②「健康で文化的な最低限度の生活」は、きわめて抽象的な概念であって、この規定を現実の立法として具体化するには、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであること
つまり、租税に関するルールは裁判所や内閣ではなく、選挙によって選ばれている国会が決定すべきである、ということです。憲法30条に「法律の定めるところにより」という規定があることからもこのことが言えます。国民が「納税の義務」を負うのは、「法律による」という条件付きで可能になるということです。
3.租税の徴収のあり方について
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
② 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
③ 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
税負担能力は人によって差異があります。そこで、憲法は各人が経済的な負担能力に応じて税負担をするという、応能負担の原則という考え方をとっています。これは憲法14条の平等原則から読み取ることができます。
また、憲法25条の生存権の観点から、租税法は、「健康で文化的な最低生活費」相当額を課税対象から除外する課税最低限度額を定めるべきであり、その課税最低限度額が「健康で文化的な最低生活費」相当額を下回るときは、当該課税最低限規定は違憲・無効となりうると言えます。
4.その他の議論
税負担能力は人によって差異があります。一方で、消費税は各人の負担能力を考慮しません。そこで消費税は経済的または社会的関係において差別するものであり、憲法14条法の下の平等に反するという意見もあります。
このように税と憲法に関する様々な研究がされています。ぜひ調べてみてください。
参考文献
・片上孝洋「租税の意義について」税法学571号(日本税法学会、2014年)
・川井和子「日本国憲法第30条「納税の義務」の再検討──市民法学の視座から──」税法学577号(日本税法学会、2017年)
