若くしてお父さんやお母さんが亡くなられた場合や、祖父母の養子となっている孫がいる場合には、相続人のなかに未成年の方がいることもあります。
たとえ未成年であっても相続申告が必要となりますが、今回は未成年の方が相続人の場合に注意すべきことを解説します。
⑴ 未成年とは
民法第4条で「年齢十八歳をもって、成年とする。」と定められています。
なお、2022年(令和4年)4月1日から18歳未満が未成年となり、2022年(令和4年)3月31日以前は20歳未満が未成年でした。
⑵ 未成年者控除
相続人に未成年者がいる場合には、相続税の計算上一定額を控除することができます。
①適用要件は次の4つです。
A:相続開始日に国内に住所がある人(一定の人を除きます)
国外に住所がある人でも一定の方は対象になる場合があります。
B:相続開始日に未成年者であること
民法改正に伴い、相続開始日が2022年(令和4年)4月1日以降である場合には18歳未満、2022年(令和4年)3月31日以前である場合には20歳未満となります。
C:法定相続人であること(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)
D:相続又は遺贈により財産を取得していること
相続財産を未成年者が取得しなかった場合には適用無しとなります。
②計算式
18歳(※)- 相続開始日の未成年者の年齢 × 10万円
※相続開始日が2022年(令和4年)4月1日以降である場合には18歳未満、2022年(令和4年)3月31日以前である場合には20歳未満となります。
例えば、相続開始日の年齢が16歳6か月の場合には、1年未満は切り捨てますので、(18歳-16歳)×10万円=20万円 となります。
③控除しきれない場合
未成年者控除額が、その未成年者の相続税額より多く、控除しきれない場合には、その未成年者の扶養義務者から残りの金額を控除することができます。
扶養義務者とは、配偶者、父母や祖父母、子や孫、兄弟姉妹などがその範囲となります。
⑶ 未成年者がいる場合の遺産分割協議
未成年者が遺産分割協議をする場合には法定代理人である親権者の同意が必要となります。
しかし、相続人の中に親権者がいる場合には利益相反となりますので、家庭裁判所で特別代理人を選任する必要があります。
特別代理人は共同相続人以外であれば誰でもなれますが、一般的には近い親族が選任されることが多いでしょう。
特別代理人は、「未成年者の利益を保護する」ことが目的となりますので、原則的には法定相続分を相続させる必要があります。
ただ、親権者からすれば未成年者に多額の財産を取得させるのは問題があると考える方も少なくないはずです。
この場合には例えば、相続開始日時点では17歳であっても、遺産分割協議をするときには18歳であれば自分の意志で遺産分割協議を作成することができますので、戦略的に成人するまで遺産分割協議を待つ方法も考えられます。