今回は、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」について解説します。
■概要
子や孫が、父母や祖父母から教育資金の一括贈与を受けた場合には、最大1,500万円までの贈与に対して贈与税がかからない制度です。
平成25年から始まった制度で、現行では令和5年3月31日までの贈与であればこの制度を活用することができます。
■受贈者(子や孫)の要件
受贈者の要件は、①贈与者の直系卑属であること、②贈与時点で30歳未満であること、③贈与年の前年の合計所得金額が1,000円以下であること、が要件となります。
主に、祖父母から孫へ教育資金の支援をする目的でつかわれることが多く、令和2年中にこの制度を活用して贈与を受けた人の数は21,660人で、1,443億円が贈与されています。
■非課税金額
受贈者(子や孫)1人につき1,500万円まで非課税となります。
祖父と祖母からそれぞれで1,500万円ではなく、受贈者1人につき合計1,500万円が限度となります。
また、学校等に対して直接支払われる金銭は1,500万円まで非課税となりますが、学校等以外の者に直接支払われる金銭は500万円が限度となります。(500万円は1,500万円の枠内となります。)
■教育資金の範囲
⑴学校等に対する支払い
① 入学金、授業料など。
② 学用品の購入費、修学旅行費や学校給食費など
⑵学校等以外の者に対する支払い
① 学習塾や野球、ピアノ教室などの習い事に対する対価
ただし令和元年7月1日以後については基本的に23歳までの支払いに限られます。
② 通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費
これらの支払いに充てた領収書等は期限までに口座開設をした金融機関に提出する必要があります。
■贈与税がかかる場合
次のいずれかに該当した場合には使い切らなかった金額に対して贈与税がかかります。
①受贈者が30歳に達したこと(その受贈者が学校等に在学している場合等を除く)
→30歳になった年に贈与税がかかります。
②学校等に在学している30歳以上の受贈者が、その後学校等に在学していることを届け出なかったこと
→その年に贈与税がかかります。
③学校等に在学している30歳以上の受贈者が、40歳に達したこと。
→40歳になった年に贈与税がかかります。
なお、贈与者よりも先に受贈者が死亡した場合には贈与税はかかりません。
■相続税がかかる場合
贈与者が死亡した場合には、使い切らなかった金額に対して相続税がかかる場合があります。
①平成31年3月31日までに贈与をした場合
→相続税課税はありません。
②平成31年4月1日~令和3年3月31日までの間に贈与をした場合
→贈与者が亡くなる3年以内にこの教育資金の贈与があった場合に限り相続税がかかります。
③令和3年4月1日以降に贈与をした場合
→相続税がかかり、孫の場合は2割増しになります。
ただし、上記の②や③に当てはまった場合でも受贈者が次に該当するときは相続税はかかりません。
④23歳未満である場合
⑤学校等に在学している場合
⑥教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合
■まとめ
この制度のメリットは、その贈与した教育資金が正しく管理され、孫に確実に教育資金を援助することができる点です。
普通の贈与の場合は使い方が決まっていないため、孫が自由にお金を使うことができますので、
贈与した財産の使い道が心配な方はこの制度を活用するメリットがあると言えます。
この制度のデメリットは手続きが面倒な点です。払い出しの都度金融機関での手続きが必要になります。
また、都度払いの教育資金であればそもそも贈与税はかからないので、都度払いの方が手続きが楽です。
どちらの方法で教育資金を援助するかご家族でよく話し合って決めるのが良いでしょう。