今回は土地の評価の中でも「地積規模の大きな宅地の評価」について解説します。
地積が500㎡以上の土地をお持ちの方は評価減の可能性がありますので是非チェックしてみてください。
■概要
「地積規模の大きな宅地の評価」とはざっくり言うと、広い土地の評価です。
平成29年12月31日以前の相続では「広大地の評価」でしたが、平成30年1月1日以後の相続では「地積規模の大きな宅地の評価」で土地を評価することとなりました。
以前の「広大地の評価」は適用要件の判断が難しかったですが、改正後の「地籍規模の大きな宅地の評価」では適用要件が明確となり、簡単に計算できるようになりました。
■趣旨
「広い土地なら高く売れそうなのに、評価額を減額してもいいの?」と思う人も多いと思います。
例えば1,000㎡の土地があり、そこに戸建を分譲販売する計画があり、下図のように土地が広すぎるため奥の方に住む人のために200㎡道路が必要になるとします。
この場合住宅メーカーからは800㎡分の金額で買い取られ、実際の地積よりも安く買われることとなるため、その分を考慮して土地の評価が減額されることとなります。
■適用要件(路線価地域の場合)
次の5つの要件をすべて満たす必要があります。
⑴評価の対象となる土地の地積が・・・
①三大都市圏に所在する土地は500㎡以上
②三大都市圏以外に所在する土地は1,000㎡以上
三大都市圏とは次の表に載っている市区町村です。
(出典:国税庁)
上記の表にて一部となっている市区町村は、
①首都圏は既成市街地又は近郊整備地帯 ②近畿圏は既成都市区域又は近郊整備区域 ③中部圏は都市整備区域が該当することとなり、各自治体で確認できます。
大阪府の場合は下図の通り、赤色が既成都市区域、黄色が近郊整備区域となります。
(出典:大阪府)
⑵路線価の地区区分が「普通住宅地区」か「普通商業・併用住宅地区」のいずれかであること。
松岡会計事務所の場合、オレンジ枠が所在地になりますが、正面路線(高い方の金額)が135,000円の普通商業・併用住宅地区になるので適用対象の地域となります。
路線価図の左上の方に地区区分が書かれており、青枠のところの地域が「地籍規模の大きな宅地の評価」の対象となります。
(出典:国税庁)
⑶市街化調整区域以外の地域に所在していること。
日本の国土は上記の区分で分けられています。
八尾市の場合下図のように色がついているところは市街化区域となりますので、市街化調整区域以外の地域となります。
各市区町村のHP又は窓口で確認できます。
(出典:八尾市)
⑷都市計画の用途地域が「工業専用地域」以外の地域に所在していること。
松岡会計事務所の場合、第2種中高層住居専用地域に該当します。
色で判断するか、〇印の真ん中部分で確認ができます。
⑸指定容積率が・・・
①東京都の特別区に所在する土地は300%未満
②上記以外の地域に所在する土地は400%未満
松岡会計事務所の場合、指定容積率は200%となり、〇印の上の部分で確認できます。
■適用要件(倍率地域の場合)
倍率地域の場合は路線価地域の適用要件に加えて、
大規模工場用地(一団の工場用地の地積が5万㎡以上のもの)に該当しないことが適用要件となります。
■計算式(規模格差補正率)
(出典:国税庁)
三大都市圏の1,000㎡の土地の場合は
1,000㎡(Ⓐ)×0.9(Ⓑ)+75(Ⓒ)/1,000(Ⓐ)×0.8 = 0.78
下図は規模格差補正率の早見表です。
あくまで目安なので実際の算式に当てはめて確認しましょう。
■Q&A
⑴ Q:2人で2分の1ずつ共有で所有している800㎡の土地の場合、地積は400㎡となり適用対象外となりますか?
A:複数人の共有となっている土地であっても、共有持分で按分する前の800㎡で判定となります。
⑵ Q:市街地農地でも適用対象となりますか?
A:市街地農地についても適用要件さえ満たしていれば、地籍規模の大きな宅地の評価の対象となります。市街地山林や、市街地原野等についても同様となります。
⑶ Q:不整形補正など、他の補正と併用することはできますか?
A:地籍規模の大きな宅地の評価は他の補正との併用ができます。
「地籍規模の大きな宅地の評価」は評価減が大きいので必ず適用要件を確認するようにしてください。