【Vol.043】2024年08月号
定額減税しきれないことが見込まれる方への「調整給付」について
令和6年6月から始まった定額減税は、もともと課される税額が少ない場合や住宅ローン控除の適用がある場合など、減税をしきれないケースがあります。
そのため減税しきれない分を補足する給付として「調整給付」が行われます。
調整給付は個人住民税を課税する地方自治体から給付され、納税者本人と配偶者を含めた扶養親族の人数に基づき算定される定額減税可能額が、令和5年分の所得を基に算定した所得税、住民税額を上回る者に対し、その上回る額の合算額を基礎として1万円単位で切り上げて算定した額を支給します。
対象者にはまず、自治体から給付の「確認書」が届き、これに必要事項の記入等をして返信することで給付金が振り込まれます。
確認書の送付や支給開始時期は自治体によって異なりますが、国は今夏以降が目途としています。
参考までに近畿圏の一部の市の確認書送付予定時期を記載します。
- 大阪市 → 8月中旬以降
- 八尾市 → 未定
- 東大阪市 → 8月以降
- 堺市 → 7月中旬
- 奈良市 → 7月下旬以降
- 京都市 → 7月3日から順次
- 神戸市 → 7月16日から順次
ホームページで支給開始時期を示している自治体もありますので、気になる方はご自身の住む自治体のHP等で調べてみてください。
調整給付のもらい忘れがないようご注意ください。
なお、令和6年分の所得税額が確定した後、令和5年と比較して所得に変動があるなどの一定の事情によって当初の給付額に不足があることが判明した場合は追加で給付されることとなっています。
一方で、調整給付額が過給付となった場合でも、返金する必要はないこととされています。
年末調整関係書類の様式案を公表
国税庁は税制改正等に伴い変更を予定している年末調整関係書類の様式案を公表しました。
主な変更点は以下の通りです。
令和6年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書兼所得金額調整控除申告書
→「給与所得者の基礎控除申告書」及び「給与所得者の配偶者控除等申告書」に定額減税に係る記載欄を追加
令和7年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
→「簡易な給与所得者の扶養控除等申告書」(※)としても利用できるようレイアウト修正(前年から異動がない旨を記載できる余白を追加)
(※) 令和7年分の扶養控除等申告書から、記載事項が前年の扶養控除等申告書に記載された事項から異動がない場合には、前年に提出した扶養控除等申告書に記載した事項から異動がない旨を余白に記載するだけでも良いこととなりました。これを「簡易な給与所得者の扶養控除等申告書」といいます。
令和7年分給与所得者の源泉徴収簿
→裏面に令和6年分の年末調整の計算欄(定額減税に対応した計算欄)を追加
経営セーフティ共済・10月以降の脱退に注意
中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)につき、法人が令和6年10月1日以後に共済契約を解除した後に共済契約を再び締締結した場合には、その解除の日から以後2年を経過する日までの間に支出する共済契約の掛金を損金算入できなくなります(個人の所得税についても同様)。
9月末までの解除であれば、本制限の対象とはなりません。
なお、この「解除」は共済契約者による任意解除のほか、中小企業基盤整備機構の職権による解除(掛金の滞納をしたときなどに中小機構が行う解除)、みなし解除(共済契約者の死亡、解散等により解除されたとみなされるもの)も含まれます。
特例が適用されない期間内の掛金は資産計上し、解約手当金を受け取った場合に取り崩すこととなり、解約手当金を受け取ることができないことが確定した場合に損金算入されます。
圧縮記帳の活用
中小企業に対しては様々な補助金等があり、交付を受けた補助金等により固定資産を取得する場合には、国庫補助金等の圧縮記帳の適用を受けることができます。
中小企業によく利用されている補助金等として、下記のものがあります。
- 事業再構築補助金
- IT導入補助金
- ものづくり補助金
- 小規模事業者持続化補助金 など
国庫補助金等の交付を受けて固定資産を取得した場合、補助金収入は益金の額に算入されて課税所得となります。
そこで、一時の課税を繰り延べる圧縮記帳の適用を受けることが効果的です。
例えば、5,000千円の補助金等の交付を受け、これに自己資金を追加して7,000千円の機械装置を取得した場合、補助金収入5,000千円が計上されて課税所得となります。
そこで下記のように、機械装置について圧縮損を計上し、補助金収入と相殺して課税所得が生じないようにすることが可能です。
交付時 :
現金預金 5,000千円/補助金収入 5,000千円
取得時 :
機械装置 7,000千円/現金預金 7,000千円
決算時 :
圧縮損 5,000千円/機械装置 5,000千円
↑圧縮記帳(補助金収入と相殺)
但し、この圧縮記帳によって機械装置の圧縮記帳後の取得価額は2,000千円となり、この2,000千円を基礎として減価償却を行います。
したがって、機械装置の本来の取得価額7,000千円についてまず圧縮損として5,000千円が損金となり、その後に残りの2,000千円が少しずつ減価償却費として損金になっていくことになります。
総額で考えれば、圧縮記帳の有無に関係なく取得価額の7,000千円が損金となります。
圧縮記帳の適用を受けても長期的に見れば得をしていることにはなりません。
但し、5,000千円×35%(中小企業の実効税率)=1,750千円の税負担が一時的に生じるのは避けたいところですから、課税の繰り延べによる圧縮記帳は是非活用したいところです。
なお、国庫補助金等の圧縮記帳は、下記の要件を満たす場合に適用を受けることができます。
- 国庫補助金等の交付を受けること
- 国庫補助金等をもって固定資産の取得又は改良を行うこと
- 国庫補助金等が交付された事業年度の末日までに返還不要が確定したこと
- 帳簿価額を損金経理により減額し、又は確定した決算において積立金として積み立てる方法により経理すること
- 法人税の確定申告書に損金算入に関する明細の記載があること
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