【Vol.067】2026年08月号
資金調達の新常識 ・2026年5月施行「事業性融資推進法」で何が変わるか
「自社には担保に入れられるような不動産がないから、大きな借入や思い切った設備投資は難しい・・・・・・」
多くの経営者の皆様が、このような壁に一度はぶつかったことがあるのではないでしょうか。
しかし、2026年5月25日に施行された「事業性融資推進法」により、この融資の常識が根底から覆ろうとしています。新制度『企業価値担保権』の誕生です。
『企業価値担保権』の基本と、経営者が得る最大のメリット
『企業価値担保権』とは、一言で言えば、不動産などの目に見える特定の「モノ」ではなく、会社の「事業そのもの」を丸ごと担保にする仕組みです。
会社が保有する設備や在庫だけでなく、独自の技術、ノウハウ、長年培ってきた顧客ネットワークやブランド、そしてそれらが生み出す「将来のキャッシュフロー(稼ぐ力)」までが含まれます。
これまでの物的担保融資では、会社が倒産した場合には社長個人の自宅や財産まで失うリスクを背負うのが通例でした。
しかし、企業価値担保権では、融資のリスクを社長個人ではなく、会社全体の事業価値そのものでカバーします。
そのため、原則として経営者保証を求めることが制限されることになりました。これにより、社長個人が過度なリスクを背負うことなく、前向きな経営に挑戦できる環境が整えられます。
【図表1】 従来の物的担保融資と『企業価値担保権』の違い
| 比較項目 | 従来の物的担保融資 | 新しい「企業価値担保権」による融資 |
|---|---|---|
| 主な担保対象 | 土地・建物(不動産)、 機械などの有形資産 |
会社の総財産 (技術、顧客基盤、将来の稼ぐ力含む) |
| 経営者保証 (個人保証) |
原則として必須 (社長が連帯保証人になる) |
原則として不要・制限 (個人のリスクを排除) |
| 対抗要件 手続きコスト |
個別資産ごとに抵当権設定 (登記費用が膨大) |
商業登記簿への一括登記 (一律3万円と低コスト) |
『ITベンチャーだけの話』ではない 地域中小企業のリアルな活用シーン
「将来性や目に見えない価値を担保にするなんて、どうせ最先端のITベンチャーやハイテク企業だけの話だろう」と思われるかもしれません。
この制度が威力を発揮するのは、地域に根を張り、真面目に事業を続けてきた中小企業や老舗企業です。
① 親族内・従業員への事業承継
後継者へ会社を譲りたいが、先代が残した多額の借入金の個人保証まで一緒に背負わせたくないという場合です。
新体制での事業計画の将来性を評価してもらうことで、経営者保証を外した状態でスムーズにバトンタッチが可能です。
② 前向きな設備投資・DX投資
「最新の機械を導入すれば、あるいは新店舗を出せば、確実に売上を伸ばせる確証がある」にもかかわらず、手持ちの不動産担保が底を突いているために銀行から融資を断られていたケースです。
投資後のキャッシュフロー改善見込みが評価の対象となります。
③ 実効性のある事業再生・経営改善
現在は足元の業績が赤字で苦しんでいるものの、コアとなる職人技術や長年の顧客基盤がしっかりしており、合理的な立て直し計画(事業再生計画)がある場合です。
過去の数字ではなく、これからの復活の道筋に対して資金が供給される道が開けます。
銀行の審査スタンスの変化審査の目線は「過去」から「未来」へ
これまでは「過去の決算書」や「現在の不動産査定額」という、いわば過去と現在の数字を突き合わせる確認作業が中心でした。
しかしこれからは、「この会社は今後、どのように事業を展開し、毎年のキャッシュフローを生み出していくのか」という未来のストーリーが中心になります。
万が一、融資の途中で事業計画が未達になったり、事前に取り決めた財務ルール(コベナンツ)に抵触したりした場合でも、銀行がすぐに担保権を実行して会社を差し押さえるようなことはありません。
ルールの抵触は「即座に一発アウト」ではなく、経営者と銀行が膝を突き合わせて計画を修正するための「前向きな対話の契機」と位置づけられています。
国の大きな期待と、私たちが現場で持つべき「冷静な視点」
中小企業経営者が持つべきなのは、法律ができたからといって手放しで喜ぶのではなく、実務の現場をしっかりと見据える「冷静な視点」です。
長年、日本の金融界に深く染み付いてきた「担保依存・保証人依存」の文化が、新しい法律が施行されたからといって、明日から急に現場の末端まで変わるでしょうか。
現実的には、そう簡単ではないと考えられます。現場の銀行員が、企業の目に見えない技術力や将来性を正しく見極める『目利き力』を本当に備えられるようになるのか、そして国が描いた理想通りに、リスクが発生した際にも引かずに伴走してくれるのかについては、まだまだ疑問が残ります。
新しい時代を生き抜くために、経営者が今から準備すべきこと
①『自社の目に見えない強み』を言葉にし、合理的な計画書に落とし込むこと
決算書の数字だけでは分からない、御社独自の技術、他社が真似できない職人のノウハウ、顧客との固い信頼関係などの『無形の価値』を、銀行員にも伝わる言葉で言語化してください。
② 銀行に対して情報をオープンにし、『対話』ができる関係を作っておくこと
企業価値担保権融資の土台は、銀行との絶対的な信頼関係です。
業績が良い時だけでなく、悪い時こそ早めに情報を開示し、日常的に相談ができるパイプを作っておくことが、将来的にこの制度を活用するための最大の武器になります。
国債がNISA対象に?政府が検討する魅力向上策とは
政府は、個人向け国債の魅力を高めるため、少額投資非課税制度(NISA)への組み入れや商品の拡充を急ピッチで具体化する検討を始めました。
これには、日本銀行が国債の買い入れ額を段階的に減らすなか、個人への販売を増やすことで市場の安定化を図るとともに、国民の多様な資産形成を支える狙いがあります。
NISA組み入れと「相続税非課税」案
片山財務大臣は、NISAへの国債組み入れを含む商品性の見直しを早急に具体化したいとの考えを表明しました。
この動きに先立ち、国民民主党は個人向け国債をNISAの対象とし、さらにNISAで保有する国債については相続税も非課税とする法案を参議院に提出しています。
個人向け国債の販売拡大へ議論活発
| 主体 | 提案・検討内容 |
|---|---|
| 自民党 | ・相続税の減免 ・利回りを2割程度高める ・解約規制の緩和 |
| 国民民主 | ・NISAの対象商品に追加 |
| 財務省 | ・新商品の導入へ検討開始 ・物価連動債やボーナスクーポン付き商品が議論に |
現在、国債の利子には約20%の税金がかかりますが、これが非課税になれば投資妙味は大きく向上するでしょう。
「貯蓄から投資」の新たな受け皿としての期待
今回の背景には、約2,300兆円に上る個人の金融資産のうち、国債の保有額がわずか1%程度(約20兆円)に留まっているという現状があります。
金利上昇局面において、普通預金よりも高い利回りが期待できる国債は、安定志向の投資家にとって魅力的な商品です。
現在のNISA利用層は若者に偏る傾向がありますが、リスク許容度の低い高齢層などが「インフレ負けしない資産形成」を行うための新たな選択肢として、国債の活用が期待されます。
個人向け国債のNISA組み入れは、預貯金と株式に偏りがちな国民のポートフォリオに、新たな「安定」の選択肢をもたらす可能性を秘めています。
相続税非課税などの踏み込んだ優遇措置がどこまで実現するか、今後の制度設計の方向性に注目が集まります。
インボイス経過措置の改正について
令和8年10月からインボイス制度に関して、下記の改正があります。
免税事業者からの仕入に係る経過措置
仕入税額相当額の80%控除→70%控除

控除割合の減少に伴う消費税の負担や、会計ソフトでの税区分設定、消費税申告書の正確な作成について、いまのうちからご注意下さい。
インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置(2割特例)
売上税額の2割(80%控除)→3割(70%控除)、そして法人は廃止

個人事業者は令和8年まで、法人は令和9年8月決算まで2割特例が使えますが、それ以後は3割となり、これまでより消費税の負担は増加します。
社員旅行費用と給与課税の注意点
秋~冬に向けて社員旅行等を実施する会社もあると思いますが、税制面での注意も必要です。
社内の親睦を深めること等を目的として開催される社員レクリエーション旅行については、「社会通念上一般的に行われている」と認められるものであれば、福利厚生費として処理することができますが、その範疇を超えると判断される場合には、社員旅行費用が恩恵を受けた従業員に給与として課税(源泉徴収)される可能性があります。
具体的にどのようなものが、社会通念上と認められ、給与課税されずに済むのでしょうか。
福利厚生費として処理できるもの
・旅行の期間が4泊5日以内であること
・旅行に参加した人数が全体の50%以上であること
給与等として源泉徴収の対象となるもの(上記①を満たす場合を含む)
・役員だけで行う旅行
・実質的に私的旅行と認められる旅行
・参加しなかった従業員に対し、その参加に代えて金銭を支給するなどの選択が可能な旅行
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