相続税は、納付期限までに金銭での一括納付が原則ですが、納税が難しい場合は延納や物納が認められる場合があります。
今回は相続税の物納について解説します。
1.相続税の物納とは
相続税の物納とは、現金で納付する代わりに不動産や株式などで相続税を納税する方法です。
ただし、相続税の延納や物納は自由に選べるわけではなく、適用要件を満たした方のみ活用できる制度となっています。
利用できる順番としては、
第1順位:現金で一括納付
第2順位:延納
第3順位:物納
このように、相続税の延納を活用したとしても、相続税を納付することが困難な場合にのみ相続税の物納を利用することができます。
2.物納できる財産
物納が申請できる財産は、日本国内にある相続財産で、優先順位が定められています。
第1順位:不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等
第2順位:非上場株式
第3順位:動産
例えば、不動産と非上場株式を相続した場合に、『不動産は残したいから非上場株式を物納する』という選択はできません。
また、相続人固有の財産は物納には当てられず、相続財産でも一部不適格と判断される場合があります。
3.物納と不動産売却のメリット・デメリット
物納にはメリット・デメリットがあるため、物納を検討する場合には売却して納付する場合との比較をしましょう。
例えば物納と不動産売却では、それぞれ以下のようなメリット・デメリットがあります。
⑴物納のメリット
①譲渡所得税が課税されない
②仲介手数料がかからない
⑵物納のデメリット
①測量費用がかかる
②相続税評価額で価格が計算される
路線価は時価の8割が目安となっているので時価より低い金額で納付することとなる可能性があります。
⑶不動産売却のメリット
①売買価格を自由に決めることができる。
⑷不動産売却のデメリット
①譲渡所得税がかかる
②買主をみつけるのに時間がかかることがある
③仲介手数料がかかる
4.実際の相続税の物納の申請件数
実際の相続税の物納の申請件数は、令和3年は63件、令和2年は65件と
年間100件にも満たない件数となっており、平成14年の5,708件と比べるとかなり減っていることがわかります。
相続税の物納にはメリット・デメリットがあるので、生前に準備しておくことが大切です。