国民年金等の公的年金は亡くなった月の分まで支給されますが、支給されるのは亡くなった後となるため、相続開始時点では未支給となっている年金が必ず生じることとなります。
このような未支給年金を受け取るのは遺族となりますが、未支給年金には相続税がかかるのでしょうか。
■未支給年金の課税関係
結論としては、未支給年金に相続税はかかりません。
未支給年金は本来被相続人が受け取るものであり相続財産のようにも思えます。
しかし最高裁判決(平成7年11月7日)において、未支給年金は相続財産ではないという結論が出ています。
※未支給年金の支払いを請求する権利(未支給年金請求権)は、遺族の生活保障を目的に、国民年金法第19条の規定で民法上の相続人とは異なる定め方により一定の遺族が取得する固有の権利であり、本来の相続財産にはあたらないこと等から未支給年金の相続性が否定されました。
そのため相続財産ではない未支給年金には相続税がかかりません。
また公的年金は2か月分まとめて偶数月に支給されるため、未支給年金には亡くなった月の前月以前の年金が含まれることもあります。
(例)
令和5年3月に亡くなった場合→令和5年2・3月分の年金(令和5年4月に支給予定)が未支給年金となる
このような場合でも全ての未支給年金について相続税がかからないこととなります。
ただし未支給年金は取得した遺族本人の所得(一時所得)として所得税の課税対象に該当することとなります。
一時所得には50万円の特別控除額があるため多くの場合は申告不要ですが、
未支給年金が50万円超の場合や他にも一時所得がある場合には、所得税の確定申告が必要になる可能性があります。
■相続放棄した場合の未支給年金の受け取り
未支給年金は法的に相続財産ではないという取り扱いのため、
たとえ相続放棄をしている場合であっても受け取ることができます。
■個人年金の未支給分について
未支給年金でも保険会社等の個人年金の未支給分については、相続人が相続により受給権を取得することとなるため、相続税がかかります。
相続開始後に振り込まれる年金については、しっかりと内容を確認し取り扱いを誤らないようお気を付けください。