以下の1から4の宅地のように、利用価値が付近の宅地の利用状況からみて著しく低下していると認められる場合には、その宅地の相続税評価額から、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額に10%を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価することができます。
- 道路より高い位置にある宅地または低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
- 地盤に甚だしい凹凸のある宅地
- 震動の甚だしい宅地
- 1から3までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの
もし土地全体が該当する場合には、その土地の相続税評価を10%減額することができます。
また倍率地域にある土地についても評価減が可能です。
このような「利用価値が著しく低下している宅地」の代表的なものとして、騒音の多い線路沿いの土地があげられます。
しかし線路があれば必ず評価減が認められるわけではありません。
以下のような点には注意が必要です。
①路線価、固定資産税評価額または倍率が、利用価値の著しく低下している状況を考慮して付されている場合
騒音の激しい線路沿いの土地であっても、そもそも路線価や固定資産税評価額の単価が線路から遠い宅地に比べて低くなっている場合などは、既に利用価値の低下が考慮されているため評価減を行うことができません。
②本当に利用価値が著しく低下しているか
「利用価値が著しく低下している宅地」に該当するかどうかには形式的な基準がありませんので、総合的に判断する必要があります。
騒音については、環境省から「住居地域の2車線以上の道路に面する地域は昼間60デシベル以下(夜間55デシベル以下」とする環境基準が出されており、判例でも鉄道沿線20m以内にある土地において60デシベル超の騒音が生じていたという、数値を判断基準にした判例もあります。しかしその判例でも数値だけではなく周辺の取引事例との比較なども行った結果として評価減が認められており、単純に何デシベル超なら評価減できるいったものではありません。
また騒音があったとしても通過する電車の本数が少ない線路であり利用価値があまり低下していない場合もありますので、様々な面から利用価値や取引金額への影響が高いといえる根拠を示す必要があります。
このように「利用価値が著しく低下している宅地」の評価減を適用するには、周辺の路線価や固定資産税評価額、現地の実態など多くの事項を検討する必要があります。
線路沿いというだけで評価減をしないように注意は必要ですが、「利用価値が著しく低下している宅地」に該当する要素がある宅地を見つけたら、現地調査等を行い評価減する根拠がないか確認してみることをお勧めします。