もし遺産を3人で均等に分割する場合、遺産が現預金だけなら簡単ですが、不動産がある場合にはそのままでは均等に分割するのは難しくなります。
そのため遺産分割のやり方には主に以下の3つの方法が認められています。
■現物分割
遺産をそのままの状態で分割します。
原則的にはこの方法で遺産分割を行いますが、不動産がある場合には一人だけ多額の遺産を相続する形となり相続人間で格差が生じる、均等に分けるには分筆(一つの土地を複数に分けること)しないといけなくなる等の問題が生じます。
■換価分割
その遺産を売却して金銭に代え、その金銭を分割する方法です。
(例:1,800万円で不動産を売却して、相続人3人で600万円ずつ分割する)
誰も住む予定がなく売却予定の不動産がある場合などに有効です。
相続税の計算上は、換価分割する遺産についても相続時の相続税評価額に対して課税されます(実際にいくらで売却したかは関係しません)。
また金銭の分割割合に応じて各相続人が取得した形となります。
なお実際に売却した際には譲渡益の部分に譲渡所得税が課税されますので、売却後の金銭を受け取った各相続人は所得税の確定申告を行う必要があります。
■代償分割
相続人のうちの一人(又は複数)が遺産の現物を取得し、その遺産を取得した相続人が他の相続人に対して代償金として金銭等を渡す方法です。
(例:1,800万円の不動産をAさんが相続し、代償としてAさんからBさんとCさんへ600万円ずつ金銭を振り込む)
代償金は相続人個人の財産など相続財産以外から支払っても問題ありません。
換価分割ではいくらで売れるか、いつ売れるかといった不確定要素がありますが、代償分割であれば、いつでも自由に分割額の設定が可能です。
ただ、相続人個人の貯蓄や被相続人の預貯金が多く、資金に余裕がある場合には使用できますが、金銭に余裕がない場合には使うことができません。
相続税の計算上は、代償として払った金銭は債務と同様に課税対象から差し引くこととなりますが、代償金をもらった側において相続財産として課税されるので相続税の総額は基本的に変動しません。
(相続人の間で相続税の負担額が移転する形となります)
その他、遺産の持ち分を共有する共有分割も可能ですが、売却の際に共有者全員の押印がいるなど手間が増えたり、共有者の一人が反対しただけで売却できなくなるなどデメリットが多くなるため、あまりおすすめしません。
なお遺産分割の方法は相続財産ごとに、どの方法を使うか選択できます。
換価分割、代償分割は分割協議書にこれらの分割方法を使用することを明確に記載していないと、代償金の支払等の金銭の移動に贈与税が課税される可能性もあります。
分割協議書の作成には十分に留意いただき、必要に応じて専門家に依頼することもご検討ください。