孤独死の増加が高齢化社会の日本の問題となっていますが、被相続人に法定相続人がおらず遺言もない場合、相続財産は誰が引き継ぐのでしょうか。
このような場合、相続財産は国庫に帰属する、つまり国の財産となります。
しかしすぐさま国の財産となるわけではなく、【特別縁故者(とくべつえんこしゃ)】がいる場合にはその特別縁故者が相続財産の分与を受けることができます。
■特別縁故者とは
特別縁故者とは、民法では「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者」と定められています。法定相続人のように具体的な要件ではないため、特別縁故者になるためには家庭裁判所に申立を行い認定を受ける必要があります。
また被相続人の死亡後すぐに認定されるわけではなく、相続人捜索の公告等が行われて相続人がいないと確認されて初めて申立ができるようになります。
結果として特別縁故者と認められるまでには、最低1年以上かかることとなります。
■特別縁故者になるまでの手続き等の流れ
・家庭裁判所へ申立を行い相続財産管理人(被相続人の借金の精算など、相続財産の管理や保存を行う人)を選任してもらう。
以後は家庭裁判所から以下のような順に公告が行われる。
↓相続財産管理人の選任の公告(期間:2か月)※相続人がいないかを確認するため
↓債権申立の公告(期間:2か月)※被相続人に債権(貸付金等)がある人がいないかを確認するため
↓相続人捜索の公告(期間:6か月)※相続人がいないことの最終確認
・公告が終わり相続人不存在が確定したら、相続人不存在確定後3か月以内に家庭裁判所へ特別縁故者への財産分与の申立てを行う。
⇒申立が認められれば、特別縁故者が相続財産を取得する。
■相続税について
特別縁故者が財産分与を受けることとなった場合には、その財産には相続税がかかりますが、相続人が相続する場合と比べて以下のような注意点があります。
・申告期限
特別縁故者の財産分与の審判確定日の翌日から10ヶ月以内が申告期限となります。
・相続税の2割加算の対象
特別縁故者が相続税の2割加算の対象とならない人に該当することはありませんので、必ず相続税の2割加算の対象となります。
・基礎控除は3,000万円
【3,000万円+600万円×法定相続人の数】が相続税の基礎控除額ですが、
法定相続人がいないため【600万円×法定相続人の数】が0円となりますので、最低限の3,000万円の基礎控除しか受けることができません。
・税額控除等の各種特例が適用できない
小規模宅地等の特例や障害者控除といった相続税を減額できる各種特例は法定相続人であることが要件となっているため、特別縁故者はこれらの優遇税制が使用できません。
相続人がいない場合は特別縁故者として相続財産の分与を受けられる可能性がありますが、家庭裁判所の認定がなければ国の財産になってしまいます。
しかし財産を渡したい方がいる場合、遺言なら確実に渡せますし、養子縁組をしていれば基礎控除額の増加など相続税の計算上有利になります。
相続人がいないのでお世話になった人に財産を残したい、とお考えの方は遺言を作成するなど事前に確実な方法を検討することをお勧めします。