相続税の計算上、養子縁組をした場合相続税が大幅に減ることがあります。
養子縁組をした場合の相続税への影響、メリット・デメリットを解説します。
1.養子縁組の種類
養子縁組とは、養親と養子との間に法律上の親子関係を作り出す制度の事です。
養子縁組には2種類あり、⑴養子縁組後にも実親子関係が存続する「普通養子縁組」と⑵養子縁組により実親子関係が終了する「特別養子縁組」の2種類があります。
なお、里親には法律上の親子関係は生じません。
⑴普通養子縁組
普通養子縁組は主に家系の存続や親のために行われます。
-主な要件-
①養親は20歳以上で、養子の方が年少者であること
②養子縁組をすることに養親と養子が合意していること。養子が15歳未満の場合には養子の法定代理人(親権者等)が、養子本人に代わって養子縁組の合意をします。
③市区町村の役所へ届ける(家庭裁判所への届出は不要です。)
④養親または養子に配偶者がいる場合には、原則その配偶者の同意が必要
-主な効果-
①養親と養子は、互いに扶養義務を負う
②養子の氏が養親の氏に変更される
③養親が死亡したときは、養子はその養親の相続人になる
-離縁-
①養親と養子は協議により離縁できる
②養親又は養子は、養子縁組を継続しがたい重大な事由などがあれば、家庭裁判所に離縁の訴えの提起ができる。
⑵特別養子縁組
特別養子縁組は子供の福祉、利益を図るために行われます。
-主な要件-
①養親は配偶者がいるもので、少なくとも一方の配偶者が25歳以上であること(もう一方の配偶者は20歳以上)
②夫婦共同で養子縁組
③養子は原則として15歳未満(令和2年3月31日以前は6歳未満)
④原則、養子の実父母の同意が必要(実父母がその意思表示をできない場合等は同意が不要)
⑤家庭裁判所の審判が必要
⑥6か月以上の監護が必要
-離縁-
①養親からの請求は不可
2.養子の相続分・遺留分
⑴普通養子縁組
相続分・遺留分共に実子と同じ扱いとなり、実親・養親の両方から相続を受けます。
⑵特別養子縁組
相続分・遺留分共に実子と同じ扱いとなり、養親からのみ相続を受けます。
3.相続税の基礎控除額
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。
しかし、相続税法ではカウントできる養子の数に制限があります。
被相続人に実子がいる場合には1人まで、実子がいない場合には2人までとなっています。
この養子の数の制限は、特別養子縁組の場合、配偶者の実子を養子にした場合(いわゆる連れ子養子)、代襲相続人である孫等を養子縁組した場合は含まれません。
また、養子の効果は相続税の基礎控除額だけでなく、相続分も変わるため相続税の税額計算上低い税率になります。
4.生命保険金・死亡退職金の非課税枠
養子縁組をした場合、法定相続人が増えるため生命保険金・死亡退職金の非課税枠が増えることとなります。
こちらの場合も養子の数の制限は上記と同様になります。
5.相続税の2割加算(孫を養子縁組した場合)
孫を養子縁組して、その孫が遺産を相続する場合相続税額が通常の2割増しになります。
ただし、孫が遺産を相続しない場合や、代襲相続人である孫養子である場合には、相続税の2割加算の適用はありません。
6.まとめ
相続税は相続人が多いほど、相続税額が少なくなるという性質があります。
例えば兄弟間の相続で、相続人である兄弟が多数いる場合に養子縁組をしたときは、相続人の数が減りますのでかえって相続税が増えることがあります。
養子縁組を検討されている方は、是非一度ご相談ください。