中小企業の経営者にとって、後継者へのバトンタッチは避けては通れない大きな課題の1つです。
会社の株式を後継者へ引き継ぐ際に相続税や贈与税が発生し、その税負担が事業承継の妨げになることがあります。
この負担を軽くし、次世代への円滑な承継を支援するために設けられているのが「法人版事業承継税制」です。
【法人版事業承継税制とは?】
後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。
「納税猶予」とは、税金の支払を一定期間先延ばしにできる制度です。
すぐに税金を免除するものではありませんが、会社の資金繰りや経営を安定させながら後継者が事業を引き継ぐために非常に有効です。
【制度を利用するための主な要件(概要)】
・一定の要件を満たす非上場会社であること
・贈与の場合、後継者が会社の役員であること(※)
・後継者が贈与の時(相続開始の翌日から5か月を経過する日)に代表権を有していること
・贈与の時において先代経営者が会社の代表権を有していないこと
・議決権や株式保有割合などの要件を満たしていること
・事業継続や雇用維持などの要件を一定期間守ること
・承継計画書の作成や都道府県知事の認定、継続届出などの手続きを期限内に行うこと
※特例措置:贈与の直前において会社の役員であること
一般措置:贈与の日まで引き続き3年以上を会社の役員であること
【制度利用の主な手続きの流れ】
法人版事業承継税制を利用するためには、事前準備から承継後まで、いくつかの手続きが必要です。
大まかな流れは次のとおりです。
①自社が制度の対象となるか確認
会社・株式・後継者が制度要件を満たしているかを確認します。
②「特例承継計画」を作成し、都道府県庁へ提出し、確認を受ける。
「特例措置」を利用する場合は、令和8年3月31日までに提出が必要です。
③実際に贈与を行う(又は相続が発生)
「特例措置」を利用する場合は、令和9年12月31日までに行う必要があります。
④認定申請を行う
贈与税・相続税の申告期限の2か月前までに都道府県知事へ認定申請を行います。
⑤税務署へ申告
認定書の写しとともに、贈与税・相続税の申告書を税務署へ提出し、担保提供(※)を行います。
※納税が猶予される贈与税額・相続税額及び利子税の額に見合う担保を税務署に提供する必要があります。
⑥都道府県及び税務署へ毎年報告(申告期限後5年以内)
申告期限後5年間は、都道府県へ「年次報告書」、税務署へ「継続届出書」を毎年提出します。
代表者や株主構成などに変更があった場合は、「変更届出書」などの提出も必要です。
⑦税務署へ3年に1回報告(申告期限後6年目以後)
申告期限後6年目以後は、税務署へ「継続届出書」を3年に1回提出します。
このように、制度の利用には承継前後を通して継続的な管理と報告が求められます。
そのため、早めに専門家へ相談し、計画的に準備を進めることが大切です。
【猶予された税金が免除される主なケース】
猶予されていた税金は、次のような場合に免除されることがあります。
・先代経営者(贈与者)が亡くなった場合
猶予されていた後継者の贈与税が免除されます。
ただし、贈与税が相続税に切り替わり相続税が課税されます。
切替申請を行うことで、相続税でも事業承継税制を利用し、相続税の納税を猶予することが可能です。
・2代目から3代目へ承継が行われた場合
3代目が事業承継税制を利用した場合、2代目の猶予されていた贈与税・相続税が免除されることがあります。
【猶予が取り消され税金を納めなければならない主なケース】
次のような場合には、猶予が取り消され、猶予されていた税金と利子税を納付しなければなりません。
・後継者が代表権を有しなくなった
・後継者が猶予対象株式を譲渡した
・会社が解散・清算・合併などを行った
・必要書類(年次報告書・継続届出書)を期限内に提出しなかった
・継続雇用要件を満たさなくなった(「特例措置」では緩和あり)
【まとめ】
法人版事業承継税制は、後継者が非上場株式を引き継ぐ際に発生する税金の支払を先延ばしにできる制度であり、要件を満たせば最終的に免除される可能性もあります。
ただし、承継後も都道府県や税務署への報告を怠ると猶予が取り消されるため、計画的な管理と継続的な確認が欠かせません。
利用を検討されている方は、お早めに専門家へご相談ください。
次回のブログでは法人版事業承継税制の「特例措置」と「一般措置」についてご紹介します。



