税理士法人 松岡会計事務所

松岡会計事務所通信

【Vol.059】2025年12月号

【年末年始の休業日のご連絡】

令和7年12月27日(土)~令和8年1月4日(日)

営業開始は令和8年1月5日(月)となります。

60歳になったら始めるべき、逆算の事業承継準備

2025年に入り、中小企業経営者の高齢化が急速に進んでいます。

中小企業庁の調査によると、経営者の約半数が60歳を超え、70歳以上の経営者も全体の3割近くに達しています。

かねてから叫ばれてきた「中小企業の事業承継にかかる2025年問題」とは、この経営者世代の大量引退が一気に進むことで、後継者不在や黒字廃業が急増するリスクを指します。

多くの経営者は「まだ元気だから大丈夫」「70歳くらいで考えればいい」と考えがちです。しかし実際には、事業承継には法的手続き、税務対策、利害関係者との調整など、着実な承継を行うには、少なくとも5年は必要とされています。

経営者の高齢化がもたらす“見えないリスク”

経営者が高齢化して最も大きなリスクは、「判断能力の低下」です。これは病気や認知症といった医学的な問題だけでなく、日々の経営判断のスピードや決断力の低下も含まれます。

たとえば、株式の譲渡契約や遺言書の作成は、本人の判断能力が法的に認められていなければ効力を持ちません。もし判断力の低下が進んでから対策を取ろうとしても、手続き自体が無効になる可能性があります。

そうなると、会社の株式や経営権が宙に浮き、家族間で争いが生じたり、銀行が融資を止めざるをえなくなったりと、会社経営に重大な影響を及ぼします。

なぜ“今”が転換点なのか

経営者の年齢構成を見ても、この問題は待ったなしの状況です。

中小企業庁の統計では、経営者の60歳以上が全体の約半数、70歳以上も年々増加しています。

さらに後継者不在率は6割を超え、多くの企業が「誰に継がせるか」を決められないまま時間だけが過ぎています。

事業承継の準備には、以下のような複数のステップがあります。

  1. 後継者の選定と教育
  2. 株式・資産の整理
  3. 相続・贈与・税務対策
  4. 金融機関・取引先との調整

これらを完了させるには最低でも5年、場合によっては10年かかります。例えば「60歳で始めて、65歳で引き継ぐ」というくらいのスパンを見ておくことが理想です。

早めに着手すべき理由①:法務・税務の手続きには期限がある

事業承継をめぐる税制優遇は、制度を理解していないと活用できません。

たとえば「事業承継税制(特例措置)」は、2026年3月末までに計画を提出する必要があり、認定支援機関との連携が必須です。

また、「相続時精算課税制度」も2024年に改正され、110万円の非課税枠が新設されるなど、有利な選択肢が広がっています。

こうした制度は、準備を早く始めた企業ほど有利に活用できます。

逆に、70代に入ってから検討を始めると、手続きが複雑になり、税務署や金融機関との調整に時間を取られてしまいます。

法務・税務・財務を同時並行で整理するためにも、60歳前後で専門家チームを組むことが望ましいのです。

早めに着手すべき理由②:後継者育成には“時間”が必要

経営を引き継ぐというのは、単に社長のイスを譲ることではありません。

後継者が「経営者としての判断軸」を持つためには、時間をかけた経験と実践が不可欠です。

最低でも3~5年の間、現経営者のもとで実務を学び、取引先との関係を築くことが必要です。また、後継者だけでなく、従業員・顧客・金融機関が新体制に信頼を持つまでにも時間がかかります。

経営をバトンタッチする過程では、現経営者の「任せる覚悟」も求められます。

早めに着手すべき理由③:退職金・資金準備には長期的な計画が必要

もう一つ見落とされがちなのが、退職金や株式譲渡対価の資金準備です。

多くの中小企業では、経営者の退職金が多額になりがちで、その支払いで資金繰りが悪化するケースがあります。

これを避けるためには、早い段階で生命保険・企業年金・持株会社の設立など、複数の資金ルートを設計する必要があります。

また、後継者が自社株を取得する際にも、銀行融資やM&A型承継などの検討が必要です。

結論:60歳になったら“始める”のではなく、“動き出す”

事業承継は「引退準備」ではなく、「会社の未来をデザインする経営戦略」です。

早く取り組むほど選択肢が広がり、税務面でも、経営体制面でも、リスクを抑えたスムーズな承継が可能になります。

親族内承継に限らず、社内昇格型や第三者承継(M&A)も視野に入れる時代です。

どの方法を選ぶにしても、まずは現状の整理と将来像の共有が第一歩です。60歳を迎えたその日から、“事業を次世代につなぐ5年間”を意識して行動を始めてください。それが、会社の未来を守る最大の経営判断となるのです。

令和8年4月以降も自動車通勤手当の見直しを予定

自動車等で通勤している人に係る通勤手当の所得税の非課税限度額引上げを盛り込んだ所得税法施行令の改正が11月20日に施行されました。

これにより通勤手当の非課税限度額が引き上げられ、令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当に遡って適用されます。

この改正は令和7年人事院勧告を受けたものですが、同勧告では自動車等で通勤する国家公務員の通勤手当額の上限額を令和7年4月に遡って月額3万8,700円に引き上げた上で、令和8年4月から片道60キロ以上の区分について新たな距離区分を設け、同上限額を6万6,400円とするなどとしています。

今後、令和8年4月以降の通勤手当額が引き上げられることになれば、非課税限度額も再度引き上げられる見込みです。

また、通勤の際に自らの負担で外部の駐車場を利用している公務員を対象に、令和8年4月から1か月当たり5,000円を上限とする駐車場等の利用に対する通勤手当を新設することも盛り込まれています。

取適法の特設サイトが公表されています

公正取引委員会は、令和8年1月1日施行の「中小受託取引適正化法」(通称「取適法」=改正下請法)の周知を図る特設サイトを開設しました。

同サイトでは、協議に応じない一方的な価格決定や手形払いの禁止などの委託事業者の禁止事項をはじめ、改正ポイントを分かりやすく動画で紹介しています。

同時に施行となる「受託中小企業振興法」(振興法)についても解説していますので、来月からの日々の取引についてご参考ください。

https://www.jftc.go.jp/toriteki_2025/

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