事業承継税制
概要
中小企業庁の調査では、中小企業の経営者の平均年齢は59歳と過去最高水準に達しており、事業承継が大きな関心事となっています。
事業承継の際には社長の交代という転機に加え、社長が保有していた株式を次期社長や相続人に移転する必要がありますが、その際には株式の評価額に応じた贈与税や相続税の負担が必要になります。
その税金の支払いが多額になると資金を工面するのが難しくなり、株式を譲りたくても譲れず、事業承継にあたって障害となることがあります。
このような事態に対応し、中小企業の事業継続を円滑にする目的で、事業承継税制が設けられています。
事業承継税制の内容
事業承継税制とは、中小企業の後継者が先代経営者から相続又は贈与によりその会社の株式を取得した場合に、相続税・贈与税の納税が猶予される特例制度です。
相続の場合は課税価額の80%相当額が、贈与の場合は課税価額の全額に相当する額が納税猶予されます。
また、適用を受けた後継者や先代経営者が亡くなった時には、猶予されていた相続税・贈与税が免除されます。
必要な手続き
事業承継税制の適用を受けるための大まかな手続きの流れは以下のようになります。
相続・贈与の発生
先代経営者から後継者へ、株式の相続・贈与により株式を移転します。
経済産業大臣の認定
相続開始後・贈与後に、事業承継税制で定められている会社、後継者、先代経営者それぞれの要件を満たしていることについて、経済産業大臣の認定を受けます。
申告書の作成・提出
相続税・贈与税の申告期限までに、特例を受ける旨を記載した申告書等を税務署に提出します。
「継続届出書」の提出
申告後、継続して特例の適用を受けるための要件を満たした上で、会社の経営に関する事項等を記載した「継続届出書」を、申告期限後5年間は毎年、5年経過後は3年ごとに提出します。
「免除届出書」・「免除申請書」の提出
相続を受けた後継者が亡くなった時、贈与を行った先代経営者が亡くなった時に、「免除届出書」・「免除申請書」を提出することにより、納税が猶予されていた相続税・贈与税が免除されます。
まとめ
事業承継にあたっては、後継者の検討や時期、関係者との連携等様々な課題があり、会社の状況に合わせて複合的な対策が必要になります。その中の社長交代に伴う株式の移転に関する税金面での課題は、今回ご紹介した事業承継税制を活用すればクリアできることでしょう。
ただし、この特例の適用を受けるためには様々な要件・手続きがありますので、ご検討の際には必ず税理士へご相談ください。